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面白さのしくみを説明できるか?実践で学んだ編集者に必要なスキルとは

マンガ家を支え、ともに作品を生み出していくのが編集者の役割。自分が描くのではなく、伴走者としての立場を選び取ろうとする人たちも、マンガ化志望者とともに学ぶのがきっといちばん! そんな考えのもと、コルクラボマンガ専科では「編集者枠」を設けています。
第4期にこの立場で参加した昨日のみずうみさん、らっさむさん、わたせさあやさん、松重ひろさんに、受講期間に何を考え、得られるものがあったかどうかお聞きしました。


--コルクラボマンガ専科の「編集者枠」をみなさんが見つけたきっかけや、応募の動機は?

昨日のみずうみ:クラシック音楽業界で仕事をしています。マンガ好きとはいえ自分で描くわけではないので、マンガ専科はさすがに関係ないかなと思っていたのですが、「編集者枠」というのがあると聞いて気になりはじめました。私のいるクラシック音楽制作の世界は演奏家や作曲家ありきで、マンガの編集者が担うプロデューサー的な役割はあまりない。それでもマンガづくりの過程を知るのは、きっと自分の仕事の糧にもなると思って応募しました。

らっさむ:Webメディアの編集部で働いています。コロナ禍の今はエンタメ関連記事の需要が高まっているんですよね。とくにマンガは人気があって、よく読まれます。何かもっとマンガに関わる仕事ができないかなと探していて、マンガ専科の編集者枠に行き着きました。マンガには「うまくいけば大ヒット!」という夢があっていいですよね(笑)

わたせさあや:出版社でマンガ編集の仕事をしています。社内で新しくマンガレーベルを立ち上げることになって、これまでより広い知見や、SNSを活用して盛り上げていく方法を欲していたので、編集専科に参加することに。
 応募しているのをどこで知ったかといえば、同業者のあいだで話題になっていたんですよ。こんなのが始まるらしいよと。編集の仕事って、奥義は秘伝のタレみたいに隠されていて、いまだに「見て盗め」式の伝達がされているところがある。もうちょっとオープンに学びたいと思っている若手は多いと思います。

松重ひろ:マンガの編集をしたことはないんですが、Web業界にいてディレクターをしているので、仕事に生かせたらと思ったのが応募のきっかけでした。作り手の考え方が分かれば、デザイナーやエンジニアなどクリエイターの方と仕事を進めるのがもっとうまくなれるかなと。私はマンガを描くことはできないけれど、作品づくりには人一倍興味があるんです。自分が関与することでマンガ家が成長したりいい作品が生まれたりするのであれば、そんな楽しいことはないと思いました。

--実際に受講してみて、当初抱いていた期待は満たせたものでしょうか?

昨日のみずうみ:マンガ制作の作業を丸ごと見られたのは貴重な体験です。マンガ家さんが最初にどう作品を構想して、フィードバックを受けるとどんな観点からブラッシュアップしていくのか。全部知れるのが興味深かった。講師の方がどういう言い方で問題点を指摘して、マンガ家をノセていくのかもわかりましたしね。
 マンガ専科受講生の作品をリツイートして感想を書くことが編集者枠受講生には求められていたんですけど、その文章もただ思いついたことをつらつら書くだけではダメだと気づきました。作品のどういうところが自分に刺さったのか、よくよく考えて書かないと。人に「読んでみよう」と思わせるだけの言語化能力を磨く実践の場になりました。

らっさむ:コンテンツというものを根本的に考え直すことになった点が私にはよかったです。講義の中で講師役の佐渡島さんが、「作品づくりにおいては情報じゃなくて感情を売らないとお金にならない」と言っていたんですよ。これまで私はWebメディアで情報を売っていて、そこにいかに有用なノウハウを詰め込むかが勝負だと思っていたのに、それが大きく揺らぎました。
 私としては情報も感情も、両方が必要なんだろうなという気がしています。実際、佐渡島さんの話を聞いたあと、受験関連の記事をつくることになって、失敗談や親御さんの気持ちを盛り込んで「エモく」してみたら、すごく評判がよくてたくさんの人に読んでもらえました。
 講義ではほかに、ごとう先生の愛情あふれるフィードバックがすてきでした。人や作品を好意的に見るというのは、こういうことなのだと思いましたし、佐渡島さんからの厳しいフィードバックも、モチベーションが高まりました。最後の講義のとき、佐渡島さんは「すべての感情が尊い」と仰っていて、人を全肯定する根底には、こうした考え方があるのだと思い、あとから思い出しても泣けてきました。

(▼)編集者枠の課題、作品の帯コピーを考える

わたせさあや:私も、ふだん携わっている編集という仕事をもういちど体系立てて捉え直せたのは、すごくよかったと思っています。作品で「感動」を生み出すにはどういうしくみが必要かなんて、理論立てて説明されたのは初めてでしたから。これまでは自分の感性を基準に作品を読んで、おもしろさのジャッジをするよりほかなかったので、考え方がずいぶん変わったと思います。
 仕事で担当している作品だと距離が近過ぎてなかなか客観視できませんけど、マンガ専科の受講生が試行錯誤しているのを見ると、なるほどこういう指摘を受けると成長するのかと冷静に観察できましたね。

松重ひろ:最初は「あれ? 編集のイロハを教えてもらえるんじゃないのか……」とすこしとまどいましたけど、イロハ以前のそもそもの考え方をみっちり叩き込まれるほうが結局は近道だし意味があるってすぐ理解できました。「作品とは情報の発信じゃなくて好きのおすそわけ」だなんて、まったく知らない考え方で新鮮でした。マンガには「型」があって、まずはそれを身につけるべしというのも、自分の好きな映画に置き換えて考えたらすんなりわかりました。作品を観るときの解像度が、ぐんと上がった気がします。
 グループ・ディスカッションで一緒になったマンガ家さんに「こうしたら、ああしたら」と話していたら、「あ、そうですね、そうしてみます」と作品を直してくれたことがありました。そうか、自分の捉え方や発信次第で作品が変わることもある、編集者って責任重大だなと改めて思いました。

--今後も「編集者枠」は継続して受講者を募集する予定です。受講を検討している方へアドバイスを!

わたせさあや:作品づくりの根幹をイチから学びたい人はぜひ参加すべきです! マンガ家さんの創作の源泉というか、マグマっぽいところがどうやって刺激されていくか見られるのって、ワクワクしますよ。佐渡島さんやごとうさんのような、第一線の編集者のふるまいを間近で見られるのもなかなかない機会でしょうしね。まずは話す内容も口調もマネしてみるところから入ってもいいのかなと思いました。

(▼)わたせさんが所属するマンガ編集部

らっさむ:講義の基本的な内容は、YouTubeにもアップされていて視聴できますけど、マンガ専科の場合その講義は「はじまり」に過ぎないんですよね。そこから仲間同士で話し合ったり、実作を通してやりとりをしたりすることで、マンガに対するあらゆる解像度が高まっていく。私自身、事前にYouTubeを観て予習して内容を理解したつもりだったのに、6ヶ月間の受講をした今はよくわかります。以前はいかに自分が「わかった気」になっていただけだったかと。時間をかけて体感していくことって大事だなと改めて感じています。

松重ひろ:「編集」というキーワードが少しでも気になる人なら、受講して損はないんじゃないでしょうか? マンガ家を目指す人はもちろん、声優枠の声優さんや編集枠のプロの編集者といろんな人と出会えて、びっくりするほど視野が広がりました! 私がしているWebディレクターの仕事も、一種の編集だなと感じました。仕事人としても成長できたかな、できていたらいいですね。

昨日のみずうみ:たしかにマンガ家さんから声優さんまで、これほど多様な人が集まって学んでいる場をつくり上げているのは、ほかにはないマンガ専科の強みでしょうね。そういう稀有な場でのやりとりやアウトプットを観察していくだけでもすごく参考になる。学ぶ意欲があればいくらでも勉強することがある。その自由さと奥深さがコルクラボマンガ専科のよさだろうと思いますよ。ひとりでも多くの人にぜひ体験してみてもらいたいです。

★☆☆コルクラボマンガ専科第5期 募集受付中です!
【募集期間:〜9/13(月)正午12時まで!】

昨日のみずうみさん
 Twitter   :https://twitter.com/YesterdayLake
らっさむさん
 Twitter   :https://twitter.com/LASTSAMURAI_11
わたせさあやさん
 Twitter   :https://twitter.com/saaaaaayan924
松重ひろさん
 Twitter   :https://twitter.com/rat_hiro
取材・執筆:山内宏泰
Twitter:https://twitter.com/reading_photo   
note:https://www.yamauchihiroyasu.jp/




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